女子MMA技術論

昨日の石岡沙織 vs. ハム・ソヒ戦から、男子基準で云うと石岡の場合二世代前の選手ではないかと云う印象を得た。打撃も寝技もそこそこイケてるが、スタンドレスリングがウィークポイント。

てなことを考えだした結果、以下のような文章を書いてしまっていた。箸休め程度に呼んで頂ければ幸いである。もちろん、転載も引用も批判も、何なりとご自由にして頂いて構わない。


基本的に現代MMAと云うものの先端モードは、ボクレス+漬け込み。倒す/倒されないの攻防と寝かす/立ち上がるのシンプルな攻防で主導権を握り、それが出来て初めてパスガ−ド・一本・KO狙いが始まる。具体的な選手名を出すとフランク・エドガー、GSP、ジェイク・シールズ、岡見勇信日沖発、中村アイアンとかである。

自分の知る限り、パウンドありの女子総合で上記選手と近い動きを実践出来ているのは、玉田育子だ。そして、AACC最年長の玉田がやってると云うことは、AACCはジム全体でそれに取り組んでいると云うことが想定される。藤野恵実戦の藤井惠もそれに近い動きを試みていた。ただ彼女らは全般にボクの部分が弱いが、藤井あたりはそれが改善されつつある。浜崎朱加は打撃技術も高いが、パウンドありの経験が不足している為未知数な部分が大きい(個人的にリサ・ワード戦が楽しみな最大の理由はここにある)。

辻結花はどうか? ボクレス+漬け込みを実践する要件は全て満たしているが、試合での動きを見る限りパウンドを打つ際にスペースを作る点、下になった際の逃げ方がカウンター主体である点など、技術的には旧世代の域に留まっていると思う(エメリヤエンコ・ヒョードルにも同様のことが言えた)。ただ近年は格下相手の試合が続いているので、本当のところがどうかは良く分からない(V一戦は参考にならない)。

日本の女子総合においてフランク・エドガータイプになる資質があるのは、前述の条件付きではあるが浜崎と、あとは高林恭子だ。アマチュアレスリングの競技実績、V一戦で顕著だったボクシングテクニックの向上、日沖を育成した練習環境。要件を全て満たしている。ただ高林は(辻や石岡と違い)「気持ちで戦う」部分が弱いので、メンタル面の強化が課題となる。が、それも織り込み済であることは、ALIVE・鈴木陽一氏の以下のブログ記事からも理解出来る。
http://ameblo.jp/aliveacademy/theme-10018712025.html


話しを石岡に戻すと、元々レスリングのバックボーンがない石岡は、やはり上記選手とは異なる形で現代MMAの先端モードに対抗する形が理想だと思われる。すなわち、打撃+柔術グラップリング。具体的な名前を出すと、マウリシオ・ショーグンアンデウソン・シウバだ(ちなみにどっちにも行ける状態にあるのが、平均的に全てをこなしているV一だと思うのだが、この話は措く)。

過去の事例を出すと、全盛期の渡邉久江がこれに近かった。いわゆる「ミルコスタイル」(これはいまや一世代前のスタイルになっている)だったものが、ガッツマンに通うことで寝かされてからの対応が飛躍的に向上した。しなしさとこ戦の最大の勝因は打撃技術で優ったことではなく、下からしなしをコントロールして十字まで仕掛けたグラウンド技術の向上、つまり「MMAファイター」としてのトータルバランスの向上にあると自分は考えている。

これまたパウンドありへの対応と云う条件が付随するが、ハム・ソヒも打撃を基盤としつつ、柔術グラップリングの向上によって「MMAファイター」としての進化を遂げてきた選手だ。既に2007年の時点で渡邉ですらソヒには勝てなかったし、あれからもなおソヒは飛躍的な進化を遂げている。そのバックボーンにおいて、石岡と渡邉とソヒは似ている部分が大きい。MMAにはジャンケン的な要素、つまりファイトスタイルによる相性と云うものがあるが、グーとグーが戦った際には、より先を行っているグーが勝つのである。


青木真也が言っていることなのだが、石岡は「素質が凄いファイター」である。素質「は」強いファイターであると言わない辺りに青木なりの優しさを感じもするのだが、その話は措くことにしよう。
http://twitter.com/a_ok_i/status/41285529395933184


「世界最強」と呼ばれたヒョードルですら、今や高島学に「現代MMAにヒョードルが一矢報いるには、イチからやり直すか、イリュージョンに頼るしか、手はない」と言われてしまっている時代なのだ。石岡の場合、「イチからやり直す」どころか、実はまだ何も始まってはいない。そして石岡には、ヒョードルにはない「イリュージョン」がある。それは既に藤井戦で証明されている。

いささか思い入れが先行し始めてしまったようだ。ここで筆を置くことにする。

2011年2月13日(日) clubDEEP公武堂ファイト@アスナル金山 観戦記

見知った名前の選手も多く、何よりカードが良いので楽しみにしていた公武堂ファイト

名古屋で格闘技を観戦すること自体初めてなので、会場となったアスナル金山も初めて行くハコ。商用施設のワンフロアを体育館に使ってるって感じかな? バスケットボールフルコ−ト×2くらいの大きさはあったかと。

そんなアスナル金山で行われたclubDEEP公武堂ファイト。昼興行にも関わらず、会場は超が付く程の満員でした。ざっと数えただけで椅子は200くらい。立ち見入れて300人くらいは入っていたのではないかと。

大会開始前に、服部啓氏の追悼テンカウントゴングをやってました。



【第1試合 3分2R 65kg以下 DEEP KICKルール】
梅村真平(NEX)
def.
皇子MAXハート(NEX大須)
(1R2:02 スタンドパンチによるTKO)

パソコン教室の先生がホストに勝った試合。いや本当にそうなんだって(笑)。終始ノーガードの殴り合いで、最後は連打で心の折れたホストを見てレフェリーストップ。気持ちが全面に出て面白かったですよ。

【第2試合 3分2R 80kg以下】
兼定力(NEX)
def.
浅川卓也(NEX大須)
(1R1:07 パウンド連打によるTKO)

ホストファイト「夜王」のプロデューサー浅川を、兼定がマウントからタコ殴り。ま、ここまではオープニングファイトみたいなもんだったな。

【第3試合 5分2R 62kg以下】
河合直紀(パラエストラ岐阜)
def.
村上貴将(和術慧舟會常滑道場)
(1R0:53 腕十字)

レスリング強い村上(いまどき珍しくレスリングシューズ穿いている姿が印象に残った)だがパウンド打つ際に十字取られる。タップする間もなく極って怪我したっぽい。村上の素質は感じた試合。

ところで慧舟慧舟會常滑道場の常滑ってどこかな? っと思って調べてみたら、愛知県のジムでした。ふーん、慧舟會ってこんなとこにまであったんだ。

【第4試合 5分2R 62kg以下】
篠川晴成(クラブ・バーバリアン)
def.
豊川昶勲(パンクラス稲垣組)
(1R5:00 ドクターストップによるTKO)

バーバリアンの篠川、スイングフックしか打てないし、下から十字取られかけるし、上取られると何も出来ないし、スタミナ配分も全然出来ないけど、でも強くなると思う。素質だけで勝っちゃった感じ。

1R終了時のストップの原因が会場では分からなかったのだけど、後で公式発表を見たら眼の怪我とのことでした。確かに篠川のパンチには、それだけの破壊力があったと思います。

【第5試合 5分2R 62kg以下】
中島崇夫(TBJ)
def.
石田ガリット勝也(NEX)
(2R5:00 判定3-0)

インターハイレスラーのNEX石田と、バルボーザなのにキックボクサーの中島。スタンド維持でパンチを当てる石田に対し、首相撲からの膝で流れを変える中島と云う今の「廻」チックな試合。中島のあの首相撲はマキちゃん直伝に違いない(笑)。終盤にはバルボーザらしく下から巧く三角入って、キャッチまで奪って判定は文句なし。

中島、後で調べたらキックボクサー兼柔術家なのね。総合のキャリアも多いみたいだし、どうりで強いと思った。


ここで休憩。ここまでで早くも、この興行の面白さに気付いた。会場全体の地熱が高いし、常駐するボランティアスタッフの話を聞いていても、大会全体の「手作り感」が伝わってくる。僕、こう云うの大好きなのよ。



【第6試合 5分2R 62kg以下】
吉武伸洋(パンクラス稲垣組)
def.
都築博之(GSB)
(1R1:54 右ストレートによるKO)

火が出るような打撃戦。コンビネーションと精度で圧倒する稲垣組の吉武。吉郎っぽい瞬発力と当て勘があって強い。都築も打撃技術は高かったし、鼻が曲がっても一歩も引かない気持ちの強さも見せていた。最後は前に出る都築を、吉武が右のカウンターで打ち抜いて失神KO。

両者ともにアグレッシブで、素晴らしい試合でした。吉武、前も一回は見てるはずなんだけど、この間近で見てみるとその強さが際立って印象的だった。またパンクラスでも観てみたくなった。

【第7試合 5分2R 65.8kg以下】
杉内勇(Team‐ROKEN)
def
服部謙一(NEX)
(2R4:07 リアチョーク)

1Rは上の服部、下の杉内でハーフの攻防。2R、杉内のフックが入り試合が動き出す。バック飛び付いての十字など随所に巧さを見せた服部だが、パンチ効かされてタックル入った所を切られ、バック奪われる。杉内、キッチリ極め切って落とす。

良い試合でした。吉郎戦や山崎戦が印象深い杉内だけど、最近は引退も考えたそうな。でもこの試合を見る限り、全盛期の強さはなくともまだまだやれると思った。

【第8試合 5分2R 70.3kg以下】
近藤定男(BLUE DOG GYM)
def.
松下直揮(MB3z)
(2R1:21 スタンドパンチによるKO)

さすがに松下が勝つかなと思っていたのだが。BLUE DOG GYMの近藤、とんでもなく強かったです(アマ修東日本準優勝だそうで)。何が強いって全部強かったです。一回りデカい身体、フィジカル、落ち着きっぷり、パンチとローの鋭いコンビネーション。最後は強烈な右フックで一発KO。

松下相手に打撃での圧勝劇。正直BLUE DOG GYMってだけでナメてました、ごめんなさい。これは本戦来る逸材だと思うな。

【第9試合 5分2R 70.3kg以下】
坪井淳浩(GSB)
def.
風田陣(ピロクテテス新潟)
(1R3:28 パウンドによるTKO)

かつてはそのティーカオ地獄でリオンをも苦しめた風田だが、ドランカー気味なのかな? 軽く一発貰ってからの失速が顕著だった。最後は坪井がダウン奪ってキッチリとパウンドアウト。

坪井、「次の試合が最後になる」と引退を示唆するマイク。後で某関係者にこっそり相手候補を聞いたのだが…うおー、これは燃えるぜ! 彼もある意味ご当地ファイターだしな。

【第10試合 5分2R 62kg以下】
木部亮(SPLASH)
def.
寺田功(ALLIANCE)
(2R5:00 判定2-0)

打撃では寺田だと思いきや、1R身体ごと飛び込むようなパンチでダウン奪った木部。パウンドアウトは出来なかったが、以後もタックル何度か取って五分の展開。終盤スタミナ切れと寺田のヒザに苦しむも、何とか逃げ切る。

技術もさることながら、何よりも木部の気迫が伝わる試合でした。地元勢が苦戦する中で迎えたメインで、「名古屋を背負う」と云う強い意思の表出だったようにも思えた。うん、MVPは木部だな。


面白かったです、公武堂ファイト。ハコは小さいけど超満員の客席が印象的だったのと、あと、やはり会場に一体感がある。

これは何なのかと考えた際に思い浮かんだのは、やはりコンセプトが明確な点が大きいのではないかと思った。「名古屋 vs. 他地区」。言葉にしてしまうと陳腐だけど、でもこの明瞭なコンセプトがあるからこその、会場の一体感なのだと思う。

出る名古屋の選手はみんな「ご当地ファイター」。だから集まってくるお客さんも、特定の選手を応援してるって感じよりも、ジム関係なく「名古屋の選手全員」を応援してるような感じ。いやー、名古屋の選手はみんなここに出れば、単純に地元ファンが増えるのではないか。


しかし考えてみると、東京人(いま住んでるのは埼玉だけど、メンタリティ的には東京人のつもりなんですよ、僕は。職場も休日遊ぶのも東京だしね)であるはずの自分まで、何で名古屋の選手を応援してたんだって話しで。単純に個々の選手への思い入れが強いから…だけではないと思う。


東京に住んでると東京を「地元」と感じられない部分がある(その代わり「練馬が地元」とか「世田谷が地元」とか、細分化されていく)。それは何故かと云うと、東京と云う都市自体が田舎者の集まりだから。

たとえば僕の友人で岐阜出身の人がいるのだけど、彼なんかはもう10年以上東京に住んでいるにも関わらず、未だに応援するサッカーチームはグランパスだったりするそうな。まあ彼はドラゴンズファンではないようだが(笑)。東京に住んでいても、「地元」は中部・名古屋だって意識が染み付いてしまっているんだね。

だから東京人って知縁性を欠いた、本質的には孤独な存在。それは東京生まれの東京育ちの人間であってもそうだと思う。世田谷で生まれ世田谷で生き世田谷で死んだフィッシュマンズ佐藤伸治が、「地元」である世田谷への愛ではなく、東京と云う街に生きる都市生活者の個人主義的な感覚を歌詞に綴ってきたのも、きっとそう云うことだと思う。

そう云う意味では地域に根付いた地熱みたいなものは、地方の興行に強いのだと思う。東京的な個人主義的な感覚に慣れ切っていて、そこにある種の居心地の良さも感じる僕のような人間でさえ、名古屋と云う地域に密着したコミュニティ感覚の熱気と一体感には自然と巻き込まれていったし、東京で一人にいるときとはまた別の居心地の良さを感じた。「羨ましい」とすら思った。


夜のNAGOYA KICKも、メインに出た大和ジムの悠矢が大和哲也(僕は彼を五年前に「将来のK-1 60kg級の主役になれる逸材」と見抜いていたのですよ)を彷彿させる強さを見せてくれたし、二階建て興行として考えてみても、充分に満足行く内容でした。

夜興行終了後、スタッフ・ボランティアスタッフだけでなく、残ったお客さんも名乗り出て会場の撤収作業を手伝っていた様子も印象的だった。こんなように、立ち位置の垣根を超えて一つのイベントを、一つのコミュニティを形成していく力が、この街のこの興行にはある。


(同日の)ヒョードルの敗戦で、一つの時代が、一つの歴史が終わったって? うん、それはその通り。

でもね、それは所詮は、PRIDEと云う時代の「終わりの終わり」に過ぎないんだよ。新しい時代は、新しい歴史は、いつでもどこからでも始まっているんだ。たとえば「いま」の「名古屋」からも、それは始まっている。

うん、僕はきっとまた来るよ、名古屋。

未来はねえ、明るいって

総合格闘技の明るい未来」(電脳如是我聞 - 長尾メモ8 weblog
http://d.hatena.ne.jp/memo8/20110215/p1


これに対する極私的な感想をtwitter上で書いたので、以下原文を併記した上で、その感想に加筆修正を加えて転載することとする。

これは極私的な思いだが、自分は自分の感情を揺らしたくて、何かを観る。それは競技スポーツに限らずだ。いわゆるすべての「作品」を。


安易な正のベクトルを持った言葉、よく言われる例を使えば、夢をもらったり力をもらったり勇気をもらったりしたいわけではないのだ。大体、何かを観て得られた夢や力や勇気など、大したものではない。夢は自分で思い描くものだし、力は自分で身に付けるものだし、勇気は自分で絞り出すものだ。


が、多くの競技者や運営者が、夢を与えたい勇気を与えたいなどと言う。そんなものは、すべてが偽善か自己弁護であるので、観戦者である貴方は、一切気にしないでよろしい。思い切り無視し給え。自分は多くの場合、自分の絶望を確認したくて作品を観る。あるいは、自分の流した涙を拭くハンカチが欲しくて作品を観る。ごく稀に、わずかな希望を繋ぎ合わせたくて作品を観る。


が、多くの競技者や運営者が、夢を与えたい勇気を与えたいなどと言う。そんなものは、すべてが偽善か自己弁護であるので、観戦者である貴方は、一切気にしないでよろしい。思い切り無視し給え。自分は多くの場合、自分の絶望を確認したくて作品を観る。あるいは、自分の流した涙を拭くハンカチが欲しくて作品を観る。ごく稀に、わずかな希望を繋ぎ合わせたくて作品を観る。


競技とは競技者のものだ。競技は、競技に参加し勝利するという愉悦を本質としている。だからこそ、競技者自身が、夢を思い描き、力をつけ、勇気を振り絞り、頂点を目指して戦うのが競技である。


けれど、その過程の激しさ、結果の厳しさ、高められた技術の美しさ、そして切なさや戸惑い、やがて、競技者のリアルな感情が、少しだけ観戦者に雫のように降り注いで、そうしてようやく、競技は観戦者の心を打つ。競技者と観戦者の心に、幻想の幸福が共有される一瞬。その時、初めて競技はスペクテータースポーツとしての価値を持つ。


だからこそ、競技は、どこまで行っても競技者のものだ。


僕は夢や力や勇気が欲しくて格闘技を観ている訳ではない。格闘技に(広義の)感情表現を求めている部分も重なる。がしかし、格闘技を観戦する過程で感情を揺らされた結果として、自分の内面に夢や力や勇気が生成されることはあった。それは格闘技を観たからこそ得られたものであると同時に、内発的なものでもあったと思う。

格闘技の競技者の競技者としての姿は美しい。リング内で表出される技術、表情、感情。リング内外において伝えられる、競技者としての自己を維持する為の生活者としての一面も含んだ、広い意味における「生き方」。その全てが自分にとっては最良の感情表現である。

その感情表現を媒介として共有される「幸福」が「幻想」であるのだとしても、自分の内面に内発的に生成された夢や力や勇気が、翌日になれば薄れて、やがては消えてしまう脆く儚いものに過ぎないのだとしても、自分はその自分だけの共有体験を、自分だけの夢や力や勇気を求めて、格闘技を観る/観てきた。今までも、そしてこれからも。


だから/だが、僕は「遺言」とは正逆の方向を向きつつ接近する。接近し、また正逆を向く。次元の低い鸚鵡返しであることを承知の上で、書く。

夢を、力を、勇気を貰いました。そんな偽善や自己弁護めいたことを言う僕みたいなファンのことなんて、競技者である貴方は、一切気にしないでよろしい。思い切り無視し給え。僕みたいなファンが抱く共有体験などと云うものは所詮は幻想に過ぎないし、生成された夢や力や勇気などというものは、貴方のそれとは一切無関係なものだ。

「だからこそ」などと云う但し書きは、そもそも必要のないものだ。当たり前の前提として、競技とは競技者である貴方のものなのだ。

ならば、答えは簡単だろう。さらに努力すべきは、競技者自らなのだ。己の肉体を極限まで鍛え上げ、その強さで、観戦者の心を打ってみよ。そして思い知れ。今の君には、そんな力はないということを。己の技量と力だけで、観戦者の心を打てないのみならず、勝利すら掴めない分際で、何を言えるというのだ。


意識をさらに高く持て。競技者の意識が、ひとつ上の次元に到達しない限りは、何も変わらない。プロとして成立している他競技のアスリート達の意識は、総合格闘技の競技者のそれより明らかに高い。ひとつだけ間違いないことがあるとするならば、選手を含めた関係者は、今を変えることを恐れてはいけないこと。むしろ、変えていく必要があるということ。


(中略)


総合格闘技は、競技として極端に若い。未来が明るいかは誰にもわからないけれど、結局あれから十年経っても、まだ、何も始まってもいないことだけは確かだ。


そして、それを始めるのは、作っていくのは、君なんだよ。


然り。但し自分は「心を打ってみよ」とか「意識をさらに高く持て」などといった傲慢な事は言わない。そもそも、言える立場にない。

競技者は、見物人の心を打つ為に競技をしている訳ではない。アルピニストが死をも孕む危険性を承知の上で山に昇るのと同様に、格闘技の競技者は「ただそこに格闘技と云う競技があるから」格闘技と云う競技をしているだけに過ぎない。たとえその過程で彼らが富や名声を得るのだとしてもなお、競技と云うものの根幹にあるこの本質は変わらない。

僕は単に自分の内的必然性においてそれを観たいから、お金を払ってそれを見物させて貰っているだけに過ぎない。その一連の過程のいったいどこに、競技者に対して自分が何かを指示する権利が発生しようか。


ただ一つだけ。「心を打って欲しい」とは願う。そして心を打たれた僕のようなファンが、ファンとして出来ることを自分勝手に行うことくらいには、寛容であって欲しい、とも。

ファンが身勝手に放つ全ての批評が、競技者の競技者としての成功には何ら貢献しないことも、ファンが身勝手に抱く当事者性が、競技者の側が求めているものと一致しないことも全て承知の上で、それでもなおそれらに寛容である程度には、「意識を高く持って欲しい」と、そう願う。


「作っていくのは、君」。この「君」と云う一語が具体的に何を指示表出とするものなのか、ついぞ自分の中で結論は出なかった。

しかし、過去の多くの(競技スポーツを含む)表現の世界において、歴史を紡ぐ第一バイオリンを弾くのは、結局はプレイヤー自身ではなかったか。その第一バイオリンを中心として、関係者は一つの楽団として幾重にも重なる演奏を奏で、技術と意識の向上と比例して、その演奏の熱は高まる。

自身の内的必然性において傍観者ではいられない僕のようなファンは、しかし、ただお金を払ってそれを見物させて貰うだけの立場に過ぎない点を以って、どこまで行っても傍観者でしか有り得ない。しかし、歴史を紡ぐ当事者には成り得ないことは理解しつつ、それでもなおただの傍観者ではいられない自分は、こう願う。

紡がれる歴史の同伴者ではありたい、と。同伴者として、自分に出来る範囲内で自分が出来得る限りのことをやっていきたい、と。そしてそうすることで、同じ同伴者であるのなら、より近い場所で歴史が紡がれる様を見届け、歴史を紡ぐ競技者の姿を見守る機会を得たい。その程度には、自分は「無私」ではない。


最後に一つ。長尾氏はこう言う。

もう、随分と前から、格闘技について、特に総合格闘技について、書くのが辛いのだ。


(中略)


実は、この連載、総合格闘技のインサイダーとしての遺言のつもりなんである。


と。

立っている位置は違うけど同じ方向を向いている/同じ方向を向いているけど立っている位置が違うこと、そして「競技者」と云う存在に対して、違うようで同じ/同じようで違う結論に至ってしまうことと同様に、プロモーターである長尾氏とは恐らくは似て非なる事情に因るものであることだとは思うが、自分もまた総合格闘技、とりわけ女子格闘技について書くこと/語ることが辛くなってきている。

自分が先日書いた激励賞の話し。これは自分の中では「ファンが出来ること」シリーズとして連載化していくつもりではあるのだが、その構成も結末もまだ用意はしていない。ファンとしての自分が知らないこと、知らなかったこともまだまだ多く、そんな自分がいかにしてリアルタイムで更新されていくか、まだ自分でも分からないからだ。

故に、その連載を自分のファンとしての「遺言」にするつもりは、今のところない。が、結果としてそれが「遺言」になっても仕方がないと云うくらいには、自分は自分の立ち位置においても、また内的必然性において、それ以外のあらゆる主観的/客観的な言説を呈せなくなってしまってきている。


ただいずれにせよ、「遺言」は確かに聞いたつもりだ。「後は任せろ」と言える程に、自分は力のある人間ではない。そもそも、そんなことを言える立場にある人間ではない。でも、自分一人でなければ何とか言えるし言っても良い気がするから、出来ればみんなにも一緒に言って欲しい。「後は任せろ」と。自分一人では消え入りそうな小さな声でしか言えないこの言葉も、みんなで言えばきっと大きく響くと思う。

そしていつか、「後は任せろ」ではなく、こんな言葉を言ってみたい。「次は君たちの番だ」と。誰に向けて? それはね、きっと明るいはずの総合格闘技の未来にいる、「未来の他者」に向けてだよ。

未来は僕の物でもなければ僕たちの物でもない。未来は常に、君たちの物なんだ。

2011年2月6日(日) パンクラス@ディファ有明 観戦記

友人に頼まれて第一部に出場したある選手からチケットを買ったんだけど、遅刻してその選手の試合には間に合わず。大変失礼を致しました。この場を借りてお詫び申し上げます。

いつか営業をしなくとも大舞台で起用されるような強い選手に育ってくれることを期待しつつ、第二部からの観戦。



【第1試合 ライト級 5分2R】
徳留一樹パラエストラ八王子)
def.
太田純一(GOKITAジム)
(1R2:55 パウンドによるTKO)

打撃で果敢に攻めた太田だが、体幹で優る徳留がタックル潰してのトップポジション奪取。マウント、バック、インサイドとポジションに関わらずパウンドの嵐でレフェリーストップ。強い! 伊藤戦の衝撃KO以来観てきたが、これはスーパールーキーと呼んで良いと思う。

twitterでもおなじみの太田選手は残念な結果でした。ただ今回は相手が強過ぎた感は否めず。次の試合はまた頑張って欲しいと思います。

【第2試合 フライ級 5分2R】
廣瀬勲ストライプル/3位)
def.
佐藤ハヤト(パラエストラ松戸)
(2R1:43 リアネイキッドチョーク)

佐藤の足関狙いを冷製に捌きつつ優位に進めた廣瀬。2Rパウンドを嫌って後ろ向いた隙を逃さず一本。完勝。ランキング3位だし、本来はここでやる選手ではない。

【第3試合 フライ級 5分2R】
松永義弘(禅道会新宿道場)
def.
江泉卓哉(総合格闘技道場武門會/5位)
(判定3-0<小菅20-18/大薮20-19/千葉20-19>)

リードジャブ、ボディーストレートからオーバーハンドに繋げるコンビネーションが冴えた松永が1Rから優勢に試合を進める。2Rにはダウンも奪い完勝。江泉相手に打撃で勝つのは凄い。俊敏性抜群の動きは観てて爽快。強くて面白い、好選手。

【第4試合 ライトヘビー級 5分2R】
田中章仁(SRC本部道場)
def.
福田雄平(HIDE'S KICK)
(判定0-3<川口20-19/大薮20-19/千葉20-19>)

レスリング全日本七連覇でSRC育成選手の田中、終始優位なポジションをキープし、アームやチョーク狙い。自身の投げ、相手の投げを強引に押し潰すフィジカル、ポジショニングの意識と基礎技術。デビュー戦(と言ってもキン肉万太郎で一試合してる訳だが)にしては及第点以上。

課題は最後スタンドに戻された際、スタミナ切れで打撃で押し込まれたことか。この辺りが改善されれば、相当上に来る素材だと思う。あと、1R一瞬垣間見せた、上体起こして打ち落とす重いパウンドは可能性を感じさせた。

【第5試合 バンタム級次期王座挑戦者査定試合 5分2R】
大石真丈(フリー/2位)
draw.
滝田J太郎和術慧舟會東京本部)
(判定1-0<千葉20-20/小菅20-20/川口20-19>)

相変わらずパンクラスでは異彩を放つ大石のテクニカルな動き…なのだが、なまじ滝田がそれに対応出来る選手だけに、やや展開の少ない試合になってしまった印象(途中コスチュームを誤認してどっちがどっちだか分からなくなった自分の落ち度も大きいが)。

ポジショニングの争い自体は面白かったし、終盤のベテラン同士の熱い殴り合いにはちょっと燃えた。

【第6試合 バンタム級次期王座挑戦者査定試合 5分2R】
赤井太志朗(ノヴァ・ウニオン・ジャパン/3位)
def.
佐藤将光(坂口道場 一族)
(判定2-0<千葉20-19/小菅20-19/川口20-20>)

大激戦。寝ても立っても。僕の眼には佐藤勝利に映ったが…。主観はともかく、赤井相手に肉薄していたのは確かだし、ウマハノフに勝ったISAOと云い最近の坂口道場勢は充実している。

思い入れがあるのは赤井の方なのだが、試合中にいつのまにか佐藤を応援していた。この選手は何か持っている気がする。

ただ(他の試合もそうだが)次期挑戦者査定試合を2Rでやるのはいかがなものか。素晴らしい試合だったし、3Rで観たかった。

【第7試合 ウェルター級 5分2R】
KEI山宮GRABAKA/3位)
draw.
窪田幸生(坂口道場 一族)
(判定1-0<小菅20-20/川口20-19/大薮20-20>)

おおむねいつものKEITIME…と思いきや、予想以上に窪田が善戦。最後の打ち合いは熱かった。

と、これだけじゃつまらないので、おまけのトリビアを。デビュー初期の中井りんは、山宮よりもさらに激しいサークリングで相手を翻弄するスピードタイプの選手だった。あの頃の方が強かった気がする。

【第8試合 フェザー級 5分2R】
鹿又智成(パラエストラ八王子/1位)
def.
宮路智之(和術慧舟會TLIVE/ネオブラッドトーナメント'10同級優勝)
(判定3-0<川口20-19/大薮20-19/千葉20-19>)

下からコントロールして多彩な仕掛けを見せるいつもの鹿又の試合…だったが、2R中盤落として綺麗にバック奪って、マウントまで奪ってパウンド落とした宮路の攻勢の方が印象的だった。19-19で良かったのでは?


ここで休憩。休憩中は、twitterのタイムラインで流れるDEEP静岡大会の話題で友人と会話。ABの大逆転勝利の話とか、ウルカくん苦戦の話とか。僕「ウルカくん苦戦したんだって?」、友人「相手が鍵山だからねえ、うるるん苦戦すると思ってた」。うるるんじゃなくてウルカくんで良いと思うのだが(笑)。

とまれ、DEEP静岡大会を速報して下さったみなさま、ありがとうございました。こう云う情況でやるtwitterは共通の話題を提供してくれて(たぶん向こうもそうだったのだろうと想像)本当に面白いです。



【第9試合 バンタム級次期王座挑戦者査定試合 5分2R】
川原誠也(パンクラス P's LAB 横浜/1位)
def.
村田卓実(和術慧舟會A-3/5位)
(2R3:07 パウンドによるTKO)

ムダな筋肉落として動きのキレが上がった川原。1R一発で倒した投げやグラウンドのコントロールなど、レスリングベースで安定感が増した感じ。打撃も危なげなく、最後は飛び膝で倒してパウンドアウト…だが。

フィニッシュ時、村田の体は完全にリング外に出ていた。それをリング外まで追った川原が制止を振り切りパウンドを続け、村田のセコンド(門脇と徹)が抗議する一幕も。アウトサイドブレイクなのかレフェリーストップなのか曖昧なのが悪い(私見では前者にすべきだと思った)。あと、こう云うときレフェリーは体を割って入れるべきだと思います。

川原は入場から試合後のマイクまで、(最大限好意的かつ婉曲な表現を用いれば)アクの強いキャラ全開でした。一部では不評のようですが、僕はいいと思うんだけどなあ、こう云うクレイジービーチックな選手が一人くらいいても。

【第10試合 ウェルター級 5分2R】
長岡弘樹総合格闘技道場DOBUITA/ライジングオン・ウェルター級王者)
def.
近藤有己パンクラスism/前パンクラス・ミドル級王者)
(判定3-0<小菅20-17/川口20-17/松宮20-18)

ファーストコンタクトの左ストレートでダウン奪われた近藤。何とか凌ぐも、終始一方的にパンチを当てられる。2Rもダウンし完敗。蹴りが出ず打撃の距離を完全に制されたのが敗因だが、それ以前に覇気が全く感じられなかった。残念。

どうも近藤、減量失敗で体調不良だったようで。脱水症状で、大会終了後に病院に運ばれたそうな。上の階級で一線級に通用しないから階級落としたのに、そしたら減量失敗って、いったいどうすればいいの?

【第11試合 セミファイナル ウェルター級 5分3R】
石川英司GRABAKA)
def.
鳥生将大(パンクラスism/2位)
(判定2-0<松宮29-29/川口30-29/小菅30-29)

1R。レスリングで石川相手に五分以上に渡り合っていた鳥生だが、投げようとした際にロープ掴んで体を入れ替えた石川がバックを奪い流れが変わる。ラウンド終了後、石川に口頭注意。

2R。テイクダウンしてハーフマウントからコツコツとパウンドを打つ石川。決定的な一撃はないが、鳥生は基本的に下がダメなので厳しい。

3R。先に差したのは鳥生だが、差し返した石川がテイクダウン。バックからコントロール。一度は立ち上がった鳥生だが、石川の前への推進力を止められず再度テイクダウンされる。何とか返して上になるも、インサイドから攻め手なく逆にバタフライで浮かされる。完敗。

鳥生、序盤戦でレスリングに自信を持ってしまったのが裏目に出た印象。突き放したりいなしたりする術(前蹴りとか首相撲とか)を身に付けて、蹴り主体の打撃を徹底的に活かした方が良いのでは?

対する英ちゃんは2004年以来のパンクラス参戦だったんだな。マーコート戦も岡見戦も、今となっては全てが懐かしい。これでランキング入りだし、改めて「おかえりなさい!」って感じ。継続参戦して、かつて届かなかったタイトルを手にして欲しい。

しかし、29-29付けた松宮よ。お前はいったい何を見ていたんだ? V一 vs. 高林の際に判定に納得行かない僕に対して、ある方が下さった「松宮はパンクラスでもドローにすることが多い」と云う指摘を思い出した。

【第12試合 メインイベント ウェルター級 KOPタイトルマッチ 5分3R】
佐藤豪則(Laughter 7/1位)
def.
URAKEN(Team ura-ken/王者)※宇良健吾 改め
(1R4:40 アームロック)

鋭い左リードジャブで距離を作ろうとする宇良だが、距離詰めた佐藤がテイクダウン。ガンガンポジションを変える動きのあるグラップリングで終始コントロールし、最後はアームで見事な一本。完勝。凄い! 素晴らしい!

今日の佐藤は技術と気迫が噛み合っていて素晴らしい戦いぶりだった。ラフター7はこれが初タイトルかな? おめでとうございます。


客入りは前回同様に、かなり良かったかと。川村に社長が変わって、手売り重視の方針に変わったと云う噂を聞いたことがあるが(逆に坂本さんは選手に営業をさせるのを嫌っていたのだとか)、それもあながち単なる噂ではないのかも。

それはともかく判定が多かったがどの試合も見所が多く、最後に佐藤がキッチリ締めて良い興行でした。私的ベストバウトはやはりメインだが(フィニッシュ時思わず立ち上がった)、もう一つ挙げるのなら松永 vs. 江泉も良かった。

パンクラス、やっぱり面白い。単純な技術水準、試合の面白さでは修斗の方がまだまだ面白いのも確か。ただ何と云うか、パンクラスは試合に関しても興行全体に関しても「語りがい」みたいなものが自分の中にあって、そこが何より面白い。

方法論はどうあれ客入りも良くなって、会場全体の熱気も一時期に比べて高まってきたと思う。上のSRCの先行きが不透明なのが不安要素だけど、この愛すべき老舗団体には、ずっとずっと続いていって欲しいと思う。

そして、近藤有己。僕は彼がどのような道に進もうとも、彼が戦い続ける限り、その戦いを見守り続ける覚悟を決めました。そうだ、僕は昔からの近藤ファンで、近藤のことが大好きだったんだ。

そんな個人的な「思い入れ」を再確認させてくれた大会でもあった。そしてこうも思う。結局のところ、「語りがい」なるものは「思い入れ」の深さとイコールなのなかな、と。

みんなで作ろう「激励賞」の輪

mixiの「総合格闘技コミュ」に「ファイトマネー問題を真剣に考えるトピック」と云うものがあって、そこはまあ管理人氏への私怨で荒らす連中がいて今ではやや閑散としてしまっているのだけど、一時期は結構な盛り上がりを見せていた。

そこに以前、こんな書き込みがあった。

MMA基金を作るんです。MMA選手を支えたいファンが集まって、月1000円、年間12000円出して、集まったお金を選手に支給すればいいんです。

これに対するレスとして、こんな書き込みも。

団体への一口株主とかいう形ならどうかと思うんですよねえ、それこそ一口千円で


チケットやグッズを買う以外に、直接的に金銭的支援をしたい云う志を持ったファンは、少なからずいると思う。なれば、基金なり株式なりと云う形でお金を出そうと云うアイデアが出てきても不思議ではないし、理解の出来る話である。

しかし、僕は言いたい。「なぜ激励賞を出さないのですか?」と。


選手のファイトマネーの向上を考え、その為のシステム構築を議論するのも良い。確かに、目の前で試合をする選手の為に、「いますぐファンが出来ること」で、即時的に効果あるものは限られている。しかし、その数少ない「いますぐファンが出来ること」の一つに、激励賞があるではないか。僕はそう思い実際に書こうと思った(のだが、直後にトピが荒れてしまったので書く気を失ってしまった)。

出し方は簡単だし、そんなにハードルの高いことではない。以下、激励賞業界(笑)の末席を汚す自分の実体験を題材として、激励賞の出し方について簡単に紹介してみたいと思う。


まず、金額の相場はだいたい五千円である。もちろんこれは金額の多寡ではなく気持ちの問題であるから、それより多く出したい人は出せば良いと思うし、それより少ないといけないと云う「ルール」がある訳でもない。だがやはりお金持ちでもない限りそんなに多くを出せるものでもないし、さりとてあまりに少ないのも選手に対して失礼に値するかなと思うので、少なくとも自分は一本あたり五千円を包むことにしている。

包む袋は何でも良いが、まあ市販されている祝儀袋を使用するのが無難だろう。僕なんかはついつい、G.Cあたりが出しているこじゃれた封筒を使ってしまっているが(笑)。また、僕はやったことないが、中に選手への簡単なメッセージカードや手紙を添えるのもアリかもしれない。但し、それを見る/読む選手が、負けて落ち込んでいる最中であることも想像に難くないので、書く内容は充分に配慮する必要があると思うが。

当然だが、袋には名目と名義を書く。まず頭に、激励賞と大きく書く。次いで下に、自分の名前を書く。実名でも仮名でも良い。僕はもう長年「フリジッドスター」と云うHNで出しているが。出す選手の名前は、まあどこでも良いと思う。端っこに書くも、裏に書くも、あなたの好きなようにして下さい。


女子総合の場合、会場入口近くの受付を窓口に利用できる。ヴァルキリーでもジュエルスでも関係者受付で激励賞を受け付けている(まあ僕は知己のスタッフに手渡ししてしまっているのだが)ので、実際に行ってみればすぐに分かると思う。記帳を求められない場合は、どの選手に出すのかを口頭で明確に伝えるのが無難であろう。

パンクラスやDEEPは出したことがないので良く分からないが、修斗では一度だけ出したことがあって、そのときは河内孝博リングアナに託した。あのときの河内氏の対応は本当に真摯かつ丁寧であった。修斗で出す際は、あまりお手間を取らせない範囲内で河内氏に託すのが良いのではないかと思う。何より読み上げる当人なので、

と云う要領で読み間違えられてしまうこともないだろう(笑)。


一人で出すことに抵抗(金銭的にも、心理的にも)がある方は、連名で出せばいい。名義はまあ何でも良いと思う。全員の名前記すと長くなってしまうと不安に思われるのなら、「○○選手私設ファンクラブ」とか適当なのをでっち上げてしまえば良い(笑)。

ちなみに、地方在住で会場に行けないファンでも、激励賞を出すことは出来る。この辺りは関係者との直接のやりとりになってしまうので詳細は書けないが、今はたいていの団体のスタッフがtwitterなどをやられているので、会場には行けないけど激励賞を出してみたいと思われる方は、彼らと直接コンタクトを取ってみると良いかもしれない。実際に地方在住ファンで激励賞を出した方の実例にチラリと触れると、彼はヴァルキリーのある選手に、茂木康子プロデューサーを介して出したそうである。


最後に。mixiの件のコミュにはこんな声もあった。

選手の方がプライドから受け取らないということは十分ありえますなあ

これは先述の基金や株式と云ったアイデアに関する話である。もちろん、選手に直接会ってお金をあげると云う、タニマチに近い行為をしようとすれば、選手の側も抵抗を覚える可能性は充分に考えられる。

しかし、激励賞を出すのに、そう云った配慮は不要であろう。激励賞と云うシステムは現実に存在するのであり、それはある種の会場の華でもあるのだ。もちろん、激励賞と云う「大義名分」があっても、それを出されることに気分を害する選手も、もしかしたらいるのかもしれない。

だが、そんなことまで気にしていたら、もうファンは何も出来なくなってしまう。誰にお願いされていなくても、激励賞を出す。その程度には、選手を応援するファンは、身勝手に行動する権利があるのではないか。大切なのは、謙虚な気持ち。「応援してやっている」のではなく、日頃から勇気や感動や夢と云ったポジティブな感情をたくさん頂いている「恩返し」として「応援させて頂いている」のだと云う思いを忘れなければ、僕はそれで良いと思っている。もちろん、自戒を込めて。


以上、簡単と言いつつ長々と書いてみましたが、いかがでしょう? 一人で出せる額は僅かであっても、一人が十人に、十人が百人にと広がって輪になっていけば、それはきっと選手を助ける大きな力となると思います。

激励賞。あなたも出してみませんか?



【追記】Cage Force近藤有己が出場した際に、近藤選手に激励賞を出したことがありました。その際は長尾メモ8氏に手渡ししました。

清廉、静謐、ときどき情熱

twitterでのタカバネタ(と云うより自分的には佐藤嘉洋ネタ兼大和哲也ネタでもあるのだが…)が思いがけず好評(?)だったのだが、今振り返ると自分はもう四年くらい前から同じようなことを書いていたのだ。

これは自分的には結構いい文章書けてたと思うし、折角の機会なのでここに再掲することとする。ついでにコメント欄で付いたオチも文句なしなので、それも併せて再掲。しかし、アラシ山さんっていったい誰だったんでしょうね?(笑)

タカバと世界との決闘に際しては、タカバに介添えせよ(2007-05-26)


行って着ました、G-SHOOTO…じゃなくて(笑)BATTLE MIX TOKOYO@東京キネマ倶楽部。この規模のハコでリングサイドから見る格闘技は本当に素晴らしい。グラウンドの見難さは否めないが、それを補って余りある臨場感は抜群なのだ。


まあどの試合も面白かったよ。修グラ王者相手にアームでグルグル回転体の松藤が見事な一本! とか、マッハの弟子・谷口のパンチ力が凄い! とか、ATCHのラッシュはタップナーみたい! とか、そのATCHからカウンター取りまくりの春崎はもっと凄い! とか色々書き記したいこともある。


でも、ここでは一試合だけ記すに留める。


【第2試合 女子51kg契約 5分2R】
×吉田正子(フリー)
(1R1:57 リアチョーク)
○高林恭子(ALIVE)

51kg契約って時点で、まあタカバの勝ちは動かないかな…と思ってはいたものの、そんな事はあまり関係ない圧勝ぶりに戦慄を覚えたよ。テイクダウンして、パウンド打って、パスして、チョーク取って。こう書くとそっけない気もするが、一つ一つの基礎的なムーブのレベルがとても高くて、誤解を恐れずに書けば、これは個人的なヒクソン最強説の根拠でもあったりする。


まあヒクソン云々は抜きにしても、フリジッドスターが激励賞を出すと凡戦になると云うジンクスを見事に打ち破った(笑)、タカバの強さには目を見張るものがある。隣で見てたミオリンも絶賛してたし、いい感じに地味強好きのマニア好みの選手になってきたタカバ、勝利試合後リング上でマイク持つことに(ついでに控室でサムライのインタビューも受けたらしく、密かに注目を集めてる?)。


「愛を知る国、愛知県の高林恭子です。今日はもう一つ、試合は玄人好みですが普段は素人好みの高林恭子です。最近は、グラウンド30秒制限とか「お嬢さんルール」が流行っているようですが…」


嘘ですごめんなさい。でも興行終了後、タカバがグラウンド30秒制限はやりにくいって云ってたのは本当です。本当と云えば、タカバがマイクで云った本当の言葉は、「呼ばれればいつでも試合しに来ます」とか、当たり障りのない内容でした。


でもねえ、「呼ばれればいつでも来る」かあ。現実にタカバが呼ばれる舞台は、これから当分修斗だけだろうし、その修斗吉田正子に勝ってしまった今、相手になるのは藤井惠くらいなんですよねえ。そして今まで、仮に俺が「俺だけのタカバ!」と云ったら「いーや俺だけの〜」と返してくれたであろう、雲助さんや犬一くんは今や…。


まあ、あなたちはそれでいいや。裏切り者だと何だと云われようとも、唯一のタカバマニアとなったらしい俺は俺で、タカバを肯定し続けるのみだ。人が人を応援するってのは、すべからくそう云うことだ。



【以下コメント欄】
アラシ山 2007/06/10 02:50 典型「すべからく」誤用パターン。ダメだな。恥ずかしい奴。


kumosky 2007/06/10 17:36 タカバを肯定し続ける俺はすべからくタカバを応援するべし。と書くべし。


しかしまあ、あの佐藤嘉洋ですら、自分の物語は未だ「第三章」の始まりだと言ってるくらいなのだから、なるほど鈴木社長が「まだまだ喋りより、アスリートとして実力を上げて行かせたい」って言う時期にいるのも分かるよ。

でもタカバもようやく、第一章の終わりくらいまでは来たよな。内外で強豪を倒しまくって、タイトル巻いて、四年後くらいには女子格闘技界の佐藤嘉洋みたいになってるといいな。いや、twitter有名人になって欲しいと云う意味ではなくて(笑)。

いずれにせよ、未来があるってのは本当に良いことだ。清廉で静謐だけど、WINDY戦勝利後のような情熱も魅力的。玄人好みかもしれないけど実力充分だし、隠れファンも結構いるみたい。うん、タカバの未来は明るい!

カスミマニアの誕生

石川佳純全日本選手権女子シングルスで優勝した。女子シングルスで高校生が優勝するのは、22年ぶり史上四人目の快挙なのだそうだ。

それを記念(?)して、前のブログに載せた文章を再掲することとする。福原愛石川佳純を対比しつつ、カスミマニアとしての自分の立ち位置を鮮明させた文章であった。

ピンは短しポンせよ乙女(2009.01.18)


愛ちゃんなんて相当昔からテレビで見てきた気がするのだが、ああ、考えてみれば福原愛は「天才卓球少女」であって、「天才卓球美少女」ではなかったのだな。より精確に言えば、「天才卓球少女」が「天才卓球美少女」になれるかどうかは、時の流れによる証明を待つより他ないことだったんだ、当時としては。


神様は残酷で(いや、この場合「公平」と云うべきか)、才能ある若者に二物を与えるとは限らないものだ。結論を先取りして言ってしまえば、福原愛は「天才卓球美少女」にはなれなかった、のだと思う。


愛嬌のある目鼻立ちをしているとは思うが、この国のマジョリティの美意識として、あれを「美少女」とは呼ばない。不幸なことに、活躍の場をシニアの大会に移すに連れて、その「天才」性も相対化されてしまってきて、正直なところかなり微妙な位置に立たされていると思う。さらに致命的だったのが、錦織のような年端も行かないガキに自ら誘いをかけるような、「SEXの匂い」を感じさせる存在になってきてしまったことだろう。自分はそれが悪しき兆候だとは、必ずしも一概に言い切れない部分があると思うのだが、この国のマジョリティの価値観として、スポーツをする少女は「SEXの匂い」を感じさせるべきではないとする意識がまだまだ支配的だと思うし(しかし「健康的美少女」の「健康的」ってどう云う意味なんでしょうね?)、いい加減そろそろマスの側からする商品価値も賞味期限切れなのかな、と思っていたのだが。


まあ、個人的には福原愛はどうでもいい。あの愛嬌のある目鼻立ちは個人的には嫌いではないが、そんなことより遥かに重要なことがある。


石川佳純である。石川佳純ですよ、石川佳純石川佳純石川佳純石川佳純。かすみん、かすみん、かすみん。さあ、みんなで連呼しよう。かすみん、かすみん、かすみんみん。かすみん、かすみん、かすみんみん。


ほら? 何だか幸せな気分になってきたでしょう?


石川佳純は美しい。これは、いくら強調してもし過ぎることはない。「人の美意識はそれぞれである」と云う価値相対主義は石川の前では完全に無効で、「愛嬌がある」と云う範疇を超越して、完全に「美少女」の領域に足を踏み入れている。この国のマジョリティの美意識として、石川のような人間を「美少女」と呼ぶのであり、それに異論を挟む余地はないだろう。こう云うことを書くとまた物議を醸しそうだが(単に引かれているだけと云う話もあるが)、もし自分が中学生か高校生くらいの年代で、クラスメートに石川佳純のような女の子がいたら、間違いなく好きになっていただろう。何て言って告白しようか、ふられてしまったらどうしようか、などと夜毎思い悩む日々を過ごしていたことだろう(ああ、また2ch某スレとかで「フリジッドはキモオタ」やら「フリジッドは花沢健吾の漫画の主人公みたい」やら書かれそうだな)。


それはさておき、いい加減そろそろ石川が福原を凌駕して、ブルーハーブばりに「時代は変る」と云うことを広く世に問う時期に来ていると勝手に思っていたのだが、現実はそう都合良く(誰に?)推移する程甘くはないのであった。両者の直接対決を実現させたところまでは、神様の憎い演出が抜群に効いていたのだが、客観的事実として現象したのは、神様に見離されかけた福原が、まるで神様に一矢報いるかのように、実力で石川を圧倒すると云う試合内容であったようだ。こう云うことを書くとまた反響を集めそうだが(単に顰蹙を買っているだけと云う話もあるが)、大奥における権力闘争で、年老いて殿の寵愛を受けられなくなった正室が、若く美しい側室を完膚なきまでに遣り込めた、と云う構図を想起してしまったのである。ったく、神様はいつだって気まぐれなもんだ。


えーと、これ以上オチはないです(笑)。


当時変わりそうで変わらなかった時代は、ついに変わった。二年越しでようやくオチが付いたと云うところであろうか。